今回は米国株vs中国株、どちらをメインに投資すべきか、その結論について解説します。
記事の構成です。
1.概要
2.問題提起 米国株に死角はないのか
3.記事を最後までお読みいただくベネフィット
4.米国株か中国株かの結論
5.理由
6.まとめ
7.米国株ヘッジのアイデア
1.概要
米国株vs中国株
米国株1択で大丈夫?
この内容について解説します。
最初に重要な点について確認しておきます。
この記事での米国株とは、米国企業のみならず米国市場に上場する株式を指します。
GDPで中国が覇権を握る日が目前に迫るなかで、なぜ中国株ではなく、米国株なのか。
過去の事例検証と将来の予想を踏まえ分かりやすく解説しますので、どうぞ最後までご覧下さい。
さて問題提起です。
2.米国株1択にリスクはないのか
私は米国株1択で良いと考えています。
米国株か中国株か、
この命題は言い換えると
世界の金融市場の中心がニューヨークか上海かという命題と同じです。
金融市場の中心であり続ける限り、世界の資本が集中し、世界の成長企業が上場を目指します。
いまのNYSE(NY証券取引所)、NASDAQが正にその状態です。
しかし頻繁に次の質問を受けます。
米国はすでに100年以上の間、GDP世界一の座に君臨しています。
近代ではおおよそ100年ごとに覇権を握る国が変化しており、1国がここまで世界を制した歴史はなく、いつ米国がその座を降りてもおかしくないのではないか?
投資は分散が基本って習ったけど、米国株だけで大丈夫?
10年、20年先を考えた場合、米国株だけでなく、先進国株や新興国株が含まれる世界株の方が安全でリターンも良いんじゃないの?
中国がGDP世界一に君臨するのは時間の問題なのでこれからは中国株メインが良いんじゃないの?
この気持ち分かります。
大切な大切なお金を、将来のために投資する。
なるべく安全に資産を増やしたい。
誰だってそう思います。
ここで確認です。
資産形成で重要なことは
途中でやめない、
長期間継続すること
です。
そのためには自分の手法を
信じられるかどうか、
納得できるかどうか、
が重要になります。
私も過去、
より良い成果とリスク低減を共存させるためにどうしたら良いか?
GDPではいずれ中国に抜かれるのは自明であるのに、米国株メインで良いのか?
今はこの疑問に対して自分なりの答えを出し、納得しています。
3.この記事を読んでいただくベネフィット
より良い資産形成のためにどの市場をメインに投資し、どのような商品を選べば良いかが分かり、
そして自分の選んだ方法を信じ、納得感を得ることができます。
さきほど私は言いました。
資産形成を成功させるためには
自分の手法を
信じられるかどうか、
納得できるかどうか、
が重要になると。
この記事は自分の手法に納得でき、あなたの資産形成を成功へと導きます。
4.結論
さて結論です。
短期的にはGDPは気にしなくて良いです。
え、そうなの??と思うかもしれません。
中国がGDPで米国を上回るからと言って、中国株をメインの投資先にする理由にはなりません。
もちろんGDPの規模も重要ですが、世界の覇権を握るためにはGDPだけでは十分ではありません。
米国は1878年に英国を抜き実質GDP世界一になっていましたが、
名実ともに米国が世界の覇権を握るきっかけとなったのは第一次世界大戦(1914年-1917年)です。
それまで世界の中心は英国でした。
世界の覇権を握るにはGDP以外に重要な要素があります。
その要素を満たすには中国には少なくとも25年は必要だと考えます。
それではGDPだけが条件ではないこと、
世界の盟主となるためのGDP以外の条件と、
中国がまだ覇権を握ることができない理由について解説します。
5.理由
それでは、なぜGDPは気にしなくて良いのか。
世界の覇権を握るにはGDP以外に重要な要素があるからです。
その理由について解説します。
中国がGDPで米国を上回るからと言って米国株ではなく中国株を買う理由にはなりません。
2019年現在の名目GDPは
米国が約2200兆円
中国が約1500兆円です
足もとで
米国の名目GDP成長率は約2%
中国の名目GDP成長率は約6%
中国は既に生産年齢人口比率が2010年をピークに低下傾向にあり、
GDP成長率もそれに伴い低下、2026年には4%台まで縮小するという予想があります。
しかし中国の成長率が鈍化しても2027年から2030年には中国は米国を名目GDPで抜き去ります。
もっと言うと既に中国はGDPで世界一になっています。
それは購買力平価(PPP)ベースのGDPです。
購買力平価とは、
ある時点における同一の商品・サービスは、ひとつの価格になる」という『一物一価の法則』を前提としています。
有名なものでは
英国の経済専門誌「エコノミスト」が毎年2回発表している『ビックマック指数』
同じくエコノミスト誌の提唱する、スターバックスのラテ(ミルク入りエスプレッソ)を基準とした「トール・ラテ指数」
Apple社のiPodの値段を基準とした豪州コモンウェルス銀行の「iPod指数」
などがあります。
それではデータを用いて検証してみましょう。
ここで使用するデータは、長期時系列データの整備の先駆者であるアンガス・マディソンの業績を引き継いで、その改善と延長を行っているフローニンゲン大学(University of Groningen)が提供するMaddison Project Database 2020(以下ではMPD2020)です。
このフローニンゲン大学のデータによると、
Maddison Project Database 2020
https://www.rug.nl/ggdc/historicaldevelopment/maddison/releases/maddison-project-database-2020
主要国の購買力平価GDPの推移はこんな感じです。
一人当たりGDPに人口をかけて計算しました。
・画像グラフ1
このGDPは、2016年には中国が米国を抜き去りトップになっています。
それでは、いよいよ中国が世界の覇権を握るのでしょうか?
過去の歴史を紐解いてみましょう。
同じくフローニンゲン大学のデータで検証してみました。
米国はGDPで世界一に躍り出たタイミングで世界の覇権を握ったのでしょうか?
歴史の事実は否、です。
・画像グラフ2
米国は1878年に実質GDP世界一となりましたが、世界経済の中心は米国には移りません。
GDPトップが入れ替わった後も米国と英国の成長率格差は大きく、
約30年後の1900年初頭には、米国経済は英国の約2倍になっていましたが世界経済の中心は英国のままでした。
もっと言うと英国はドイツにも抜かれ実質GDPは3位でした。
それでも世界経済の中心は依然として英国だったのです。
それはなぜか?
なぜならドイツマルクはおろか、USドルも国際的なインフラを備えていなかったからです。
金融市場の中心が依然として英国ロンドンのシティだったからです。
具体的には次の3つがロンドンに集約されていました。
1.世界の短期資本がロンドンに集中する仕組みになっていた(金本位制)
2.英国中央銀行のイングランド銀行が世界の中央銀行としての役割を金融政策を通じて担っていた
3.手形交換所としてロンドン市場の地位が確保されていた
ロンドン市場は国際的金融・資本・為替市場として世界に君臨し、
世界の資本はロンドンに集中し、ロンドン市場を通して世界に配分される統一的な仕組みが確立されていたのです。
これはすなわち、英国ポンドが世界から信任を得て、基軸通貨の地位を確保していたことに他なりません。
逆に言うと、米国はGDPで圧倒的なトップに立ってもUSドルが世界の信認を得られていなかったのです。世界がUSドルを用いて貿易を行うシステムにはなっていなかったといことです。
そうです、
GDP以外で世界の覇権を握るため重要は要素とは、
基軸通貨の座を確保することです。
それでは基軸通貨とはなんでしょう?
・基軸通貨とは 国際通貨研究所
「キーカレンシー」と言われるように鍵となる通貨のことで、
これを満たせば基軸通貨です、という基準はありません。
国際通貨の中でも中心的な地位を占める通貨を基軸通貨といいます。
今日では米ドルです。貿易も金融取引もドル建てが多く、各国の外貨準備もドル建てが最大です。2019年のデータによると、国際取引、外貨準備ともに約60%をUSドルが担っています。
基軸通貨に必要な条件は2点です。
それは通貨価値への
1.信認
2.利便性
です。
この2点について他の通貨に勝っている通貨が自然に基軸通貨の地位に着きます。
そして基軸通貨の具体的な役割も2つ
1.国際的取引における計算単位や決済通貨としての役割を果たす
かつ
2.外貨準備として第1位に保有される通貨
です。
それでは基軸通貨に必要な2つの条件にもどります。
信認と利便性とは、
為替相場や金利が予測不可能に乱高下せず、売買したい時、常に取引相手がみつかる安心感があることです。
通貨のこの条件を満たすには次の実態が必要です。
第1に、その通貨を擁する国の経済規模と金融市場が大きいこと
第2に、大きいばかりではなく質も大事
強さと規律を備えた金融機関が市場参加者の主流を占め、
為替相場や金利などの価格形成の透明性が高いことが必要です。
独立した金融監督者と中央銀行がシステム全体の守護者として存在します。
そして第3に、この体制が誰からも侵略されないで守り通せる強い軍事力を持ちます。
こうした3つの条件を満たすのは、今の世界では米国以外ありません。
米ドルの歴史に戻ります。
米国が世界の覇権を握るきっかけとなったのは第一次世界大戦(1914年-1917年)です。
・画像グラフ3
第一次世界大戦開戦前の1913年に英国の実質GDPは3675億ドル、これに対して米国7907億ドルと倍以上の規模にありました。
それでも世界経済の中心は英国であり、金融市場の中心はロンドンのシティでした。
GDPトップの座を譲ってもなお、それまでの海外投資のリターンで金が流入し続け、ポンドの地位は揺るがなかったからです。
しかし第一次世界大戦によって状況は大きく変わります。
第一次世界大戦は欧州が戦場となった戦争です。
戦場にならなかった米国は、
軍需物資を大量生産してヨーロッパの交戦国に輸出して莫大な利益を上げました。
そして戦費調達のために財政難に陥った欧州各国政府が発効する戦時国債を引き受けて、債権国になりました。
株式市場では「戦争は買い」、と言われます。
特に自国が戦場にならなければ経済は大きく活性化します。
戦後、英国を始めとする欧州諸国は、戦時国債の償還、すなわち返済を迫られました。
支払いは当時金本位制だったためゴールドです。
ロンドンの金融街シティの金庫に、第一次世界大戦前に世界から集まったゴールドが、大西洋を超えてニューヨークのウォール街へと流れ込みました。
第一次世界大戦の疲弊により英国の地位が失墜、大戦の戦場とならず経済復興によって債権国となった米国の地位が上昇。
通貨の信任もポンドからUSドルへ移行し始めました。
これが金融市場の中心が英国から米国に移ったきっかけです。
重要なのは戦争というイベントがポンドからUSドルへと基軸通貨変更のきっかけとなったということです。
第一次世界大戦がなければ、ポンドの基軸通貨としての地位はもうしばらく維持できていた可能性が高いのです。
言い換えれば、英ポンドからUSドルへの基軸通貨移行は、英国の自滅である側面が強いです。
基軸通貨の変遷に話を戻します。
第一次世界大戦後もまだ、USドルは単独では基軸通貨とはならず、IMF=ブレトンウッズ体制の成立まではポンドとその地位を共存する形になります。
急激には基軸通貨の地位は変わらないのです。
そして米国、およびUSドルの地位を盤石にしたのは第二次世界大戦です。
第二次世界大戦は列強が経済のブロック化を進展さえるために起こりました。
植民地が少ない日本、植民地がまったくないドイツは、国内産業を守り、成長させるには、それぞれ円ブロック、マルク・ブロックを建設して市場を確保する必要がありました。こうして日独の軍事行動から始まったのが第二次世界大戦です。
今度も主な戦場は欧州と東アジア・太平洋海域で、米国本土は破壊を免れます。
米国の工業はフル稼働し、爆弾から石油に至るまで軍需物資を大量生産して交戦国に売り込み多額の富を得ます。
・画像グラフ4
それまで政治力、軍事力決して突出した力を持っていたとは言い難い米国が、戦争で焦土とならずに済み、第二次世界大戦後に、強大な生産力(経済力)、金融力を保有していたことが世界の経済構造を変化させました。
欧州やアジアと隔絶した場所にあるという地政学的優位を、米国はフルに活かして超大国にのし上がったのです。
終戦時には世界のゴールドの380億ドルの内、200億ドルと約70%を米国一国が保有していました。
その有りあまる資金は、欧州とアジアの戦後復興に投資され、またもや債権国としての地位を確立します。
これは膨大な軍事費を支え、米軍が「世界の警察」として展開を続けるのを可能にしました。
第二次世界大戦後の世界は、米国のドルなしには生きられない構図となっていました。
その後の米国経済の繁栄は現在見る通りです。
世界の信認を得たUSドルは、ニクソンショックによりドルとゴールドとの兌換(交換)を停止し、ゴールドの裏付けがある通貨から、米国の信用のもとに成り立つ通貨となりました。
これにより米国はシニョリッジを手にします。
シニョリッジとは通貨発行益のことです。
ゴールドという後ろ盾がなくても、国家に対する信用さえ揺るがなければ、法定通貨を発行すれば政府に多額の利益が入ります。
日本は基軸通貨ではないのでシニョリッジの効果は日本国内だけに留まりますが、これが基軸通貨となれば世界中を相手にすることが出来るので規模のメリットが異なります。
米国はドルを刷れば世界中からモノやサービスを買うことが可能なのです。
言い換えれば
紙切れを輸出してモノ・サービスを輸入しているのです。
そのためには経済力だけでなく、紙切れを信用させる米国に対する絶対の信任が必要です。
ここで世界の覇権=基軸通貨になるための条件が出てきました。
米国に対する絶対の信任です。
それは、世界を治めるだけの圧倒的な軍事力が必要だということです。
それでは米中の軍事力を確認しましょう。
・軍事力
グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の「2019年軍事力ランキング(2019 Military Strength Ranking)」は、55以上の要素を総合的に評価しランキングしています。
2019年に中国は3位、米国は1位です。
年間の軍事予算については米国7160億ドル、中国2240億ドルと3.3倍の開きがあります。中国は軍事予算に含まない軍備拡大の投資があるので単純に比較は出来ませんが、米中の軍事力格差が急激に縮小するとは考え難いです。
中国
兵員(推定):269万3000
航空戦力:3187(137カ国中3位)
戦闘機:1222(2位)
戦車:1万3050(2位)
主要艦艇:714(空母1)
軍事予算:2240億ドル
米国
兵員(推定):214万1900
航空戦力:1万3398(137カ国中1位)
戦闘機:2362(1位)
戦車:6287(3位)
主要艦艇:415(空母24)
軍事予算:7160億ドル
米国の軍事専門家の中には米国と中国の軍事力の間には総合的にみて現時点で約30年の開きがあると分析する向きもおり、中国の専門家も現時点では同意しているようです。
6.ここまでのまとめ
これで世界の覇権を握るための2つの条件が出そろいました。
1.世界から投資を受け入れるだけの圧倒的な経済力を持つ(GDP)
2.世界から信任を受けた基軸通貨を保有(=圧倒的な軍事力)
1.について、
米国が英国に取って代わるタイミングでGDPは2倍以上の規模を誇っていました。
先ほどのフローニンゲン大学のデータに今後の一人当たりGDP成長率予想をセットしてシミュレーションした結果がこちらです。
・画像グラフ5
中国の成長率を足もと5%、
2026年から10年間を4%、
2036年から10年間を3.5%
2046年から10年間を3%
2056年から10年間を2.5%
としました。
一方で米国は
足もとを2%
2026年から10年間を1.5%
2036年からは1%です。
中国の人口は米国のおおよそ4倍なので、中国の一人当たりGDPが米国の二分の一に到達したときに中国のGDPは米国の約2倍になっていると考えられます。
このシミュレーションだとそのタイミングは2046年です。
つづいて
2.世界から信任を受けた基軸通貨を保有
です。
これについてはシミュレーションが困難です。
しかし
世界の基軸通貨の交代のパターンは2つのポイントがありました。
①台頭するライバルに対して、経済的、政治的、軍事的敗北が脆弱性を生んでいる
②莫大な債務が存在し拡大しており、それを中央銀行がファイナンス(引き受け)している
①の経済面は先ほど確認した通り、2046年ころにやっと中国が圧倒的な立場に立つ可能性がありますが、政治的、軍事的には米国がよほどのボーンヘッドを起こさない限り安泰でしょう。特に軍事面では陸続きで紛争を抱えている中国と異なり、米国は同盟国と海に囲まれており、地政学リスクは米国に優位に働きます。
基軸通貨となるための圧倒的な軍事力については、軍事行動を持って中国が米国に挑む可能性は小さいです。
それはその行動が逆に世界の信認を損なうことにつながるからです。
②の莫大な債務と拡大、そして中央銀行のファイナンス問題については、新型コロナウィルスの影響で米国において猛烈に進行中です。この点については中国に分がありそうに見えます。
しかし昨今勢いを増すMMT(現代貨幣理論)の考え方によれば私は大きな問題ではないと考えます。
以上により、
これらから今後25年から30年程度はUSドルの地位は安泰だと考えられます。
言い換えると金融市場の中心は米国ニューヨークであり、米国株メインの投資が将来的な成果を生むことが予想されます。
まとめると
中国が世界経済の中心となる覇権国になるか、中国株メインの投資が良いのではないか、
の問いに対して、
・中国がGDP世界一になっても金融市場の中心は中国に移らない
・中国株がメインの投資先となるには人民元が基軸通貨になることが必要
・人民元が基軸通貨としての条件を満たすGDP規模に達するには25年から30年を要すると予想
(英ポンドからUSドルに基軸通貨が代わった歴史)
・英ポンドからUSドルに基軸通貨が代わったのは英ポンドの自滅要素が大きかった
結論
現時点の予想では25年から30年は米国株主流の時代が継続
となります。
一方で
中国は現在、太平洋諸国やアフリカ諸国に資金援助を積極的に実施し、人民元の世界シェアを上げようとしています。
アフリカ諸国は伝統的に奴隷制度が維持されており、奴隷制度の廃止を求める米国と、奴隷制度を容認する中国では、中国の方がアフリカから受け入れやすいのが現状です。
今後人口爆発が予想されるアフリカへの投資や貿易で、中国人民元の使用が主流となれば人民元の基軸通貨化が早まるリスクがあります。
また、中国が表明したデジタル人民元の普及スピードにも注目する必要はあります。
7.米国株ヘッジのアイデア
ヘッジとは、ある特定のリスクに対して、そのリスクを打ち消す回避策のことです。
それでも中国株への投資をしたい、というのであれば次の方法をおすすめします。
中国市場で個別企業に投資するのは非常に難しいです。
それは株式市場が成熟していないからです。
株式市場が実体経済の鏡と言われるとおり、経済の好不調、あるいは政治や社会に異変が起きているかどうかを知るうえで、株価の動向は絶好のバロメーターといえます。
しかし、中国の株式市場ではこの当たり前の常識が通用しないのです。1990年に上海や深圳証券取引所が発足した時から、中国の証券市場の歩みを見てみると、実体経済と株式市場の乖離が頻繁にあります。
1990年代から2000年代、中国の実質GDP成長率が2桁の高成長を続けていたにもかかわらず、北京オリンピック開催直前のバブル相場を除いて、上海株の上昇局面はほとんど続きませんでした。上海株と中国景気の相関がないとは言い切れないですが、経済の鏡としての役割が果たされているとは言い難いです。
その理由の1つは、中国市場には多くの国有企業が上場することにあります。
一般的に上場企業は優良企業の代名詞であり、上場企業の社員も社会的に認められる傾向があります。
しかし、中国では上場企業の存在感は決して高いとは言えません。
国有企業は独占的な地位をもって市場で活動しており、国民から畏敬の念を持って接していられるとはほど遠い存在です。
また、全てではありませんが、株式上場を「あぶく銭を手にするチャンス」と捉えている企業が、多いようです。
中国政府が1990年に上海証券取引所を復活させた背景には、株式制度の導入によって、行き詰まった国有企業改革を加速させる意図がありました。
数多くの国有企業が株式会社化し、見た目は資本主義国の先進国と同様の体裁になったように見えます。
しかし体裁を整えても中身が変わらなければ意味がありません。
仏作って魂入れず
です。
銀行から融資を断られるような既に死に体の国有企業が財務諸表を粉飾し、地方政府の協力で上場を果たした例すらあったと聞いています。いわゆるゾンビ企業です。
このようなゾンビ企業がはびこる市場に将来性はあるのでしょうか?
こんな金融市場が世界の中心になるはずがありません。
中国ではアリババ、テンセントをはじめ中国国外でも知名度の高い成長企業、数多くの優良企業が誕生しています。しかし、これらの中国を代表する成長企業は上海や深圳といった中国市場ではなく、香港やニューヨークなど中国本土以外の証券市場に上場しています。
このような、中国本土以外に上場する中国企業、および中国市場に上場するものの、中国政府の株式保有比率が20%未満の中国非国有企業に投資するETFがあります。
それがCXSE:ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーファンドです。
CXSEについて、SP500連動のSPY、私が最もおすすめするNASDAQ100連動のQQQ、米国20年超の国債に連動するTLTと比較、バックテストした結果がこちらです。
CXSEのデータがとれる2012年12月末からの結果になっています。
・画像グラフ6
この7年9か月で最も成績が良かったのはQQQ、大きく離れてSPY、そしてCXSE、TLTと続きます。
パフォーマンスでは3番目になっていますが、右端のUS Mkt Correlation、米国株式市場(SP500)との相関は0.6と株式指数としては高くはないレベルです。
米国株式市場の値動きの変動を抑えるのが目的であれば、-0.34と逆相関のTLTが適当ですが、米国株式市場の失墜をヘッジするのであれば、CXSEは選択肢に入ると考えます。
ただし、バックテスト期間中の年間最大リターン80%、最小リターン-28%、ドローダウン(ピークからの下落率)-35%と非常に値動きが大きくリスキーな点には注意が必要です。
いかがでしたでしょうか?
中国がGDP世界一になったとしてもすぐには世界の覇権国、金融市場の中心、メインの投資先が中国になるわけではないこと。
重要なのはGDPの規模よりも、世界の覇権国の証である基軸通貨がUSドルか人民元かであること。
英ポンドからUSドルへ基軸通貨が移った歴史を紐解くと、USドル、すなわちメインの投資先としての米国株式安泰は今後25年から30年は継続すること。
中国が覇権を握る鍵はアフリカの人民元経済圏化にあること
中国株に投資をするのであれば、非国有企業のETF、CXSEが効果的であること
がご理解いただけたと思います。
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