GAFAの投資リスクについて、改めて記事にまとめてみました。
一流の企業群ではありますが、投資する際の注意点などを示していきます。
GAFAとは
Google 検索エンジン
Amazon Eコマース&クラウドサービス
Facebook SNS
Apple 携帯機器
世界をけん引するビックテック(巨大テクノロジー)企業4社の頭文字を取った呼び方です。
この4社にMicrosoftを加えてGAFAM、また、
ネット企業の
Amazon
Netflix
の頭文字をとってFANGという呼び方もあります。
中国版では
Baidu(百度)
Alibaba(阿里巴巴)
Tencent(腾讯)
インターネット企業三強の略称でBATという呼び方もあります。
今回はGAFAへの投資リスクについて解説します。
2020年10月8日、米国だけでなく世界を代表するビッグテック企業分割についてのレポートを米国下院の反トラスト(独占禁止)小委員会が提出しました。
同レポートは449ページにもおよび、作成に際しては関係者への7回のヒアリング、130万件を超える内部文書の調査、そして240件以上のインタビューが行われたそうです。
2020年11月に民主党のバイデン氏が大統領選挙に勝利、下院でも民主党が過半数を維持、2020年2月には上院でも民主党が過半数を握ることが確定し、ブルーウェーブの状態となりました。ブルーは民主党のイメージカラーであり、大統領、上院、下院を制すことをブルーウェーブと呼びます。民主党は反トラスト法の適用に前向きであり、ビッグテック企業の分割は今後の株式市場に与える影響が大きいと考えられるため、
次の4つの順番で解説していきます。
1.同レポートの主張
2.分割の可能性
3.GAFA分割が経済に与える影響
4.米国株式市場への影響
1.同レポートの主張
同レポートでは、GAFA各社がそれぞれの基幹業務において市場を独占し、市場への新規参入をコントロールしていたことを問題視しています。
GAFAはその支配的な力を悪用して、
・競争上の脅威を削ぎ落とし
・イノベーションの減少
・消費者の選択肢の減少
・民主主義の停滞
を引き起こしていると結論づけました。
具体的には
Amazonはアメリカのオンラインショッピング市場の50%を支配しており、同社のショッピングサイトに参加している企業の1/3強が同サイトからの収入に大きく依存している。こうした「Amazon頼み」の企業は、交渉において非常に不利な立場に置かれている。
私の調べではAmazonでのセラーは売り上げの2割から3割程度をAmazonに支払っています。
Appleに関しては、スマホ市場において独占的なシェアを占めていないものも、App Storeの運営に関して独占的な立場にあり、「通常以上の利益」を生み出していると指摘されています。Appstoreでの売り上げは30%がAppleに入ります。
FacebookとGoogleに関しては、オンライン広告市場を寡占して競争を阻害していると指摘し、Facebookに関してはInstagram、Whatsappの買収についてを問題視する調査がされていました。
これに対し
Amazonは
“25兆ドル規模の世界小売市場の1%未満、米国の小売市場の4%未満を占めているのみ。
“奪い合う産業とは異なり、小売には多くの十分なスペースがある。”
と反論。
Facebookは、
“InstagramとWhatsAppが新たな高みに到達したのは、Facebookがこれらの事業に数十億ドルを投資したからだ “と主張。
Googleは、
“研究開発に数十億ドルを投資しているし GoogleマップやGmailのような無料の製品を提供もしている。移り変わりの速い、競争の激しい業界で公正に競争していると抵抗。
Appleは報告書が指摘した通り、どの市場でも支配的なシェアを持っていないことに同意し、App Storeについても他のストアと比較して適正なものだと述べました。
以上のようなGAFAによる市場独占とその弊害の対策として、同レポートではプラットフォーム運営事業と自社製品の販売事業を分割することを勧告している。
ここで確認したいのは、
同レポートを作成した反トラスト小委員会には、事業分割を命令する権限はありません。
レポートがでたところで分割になるわけではなく、
その権限を持つのは、連邦取引委員会と司法省です。
それではGAFA分割はありうるのでしょうか?
2.分割の可能性
分割の可能性は、過去のMicrosoftの事例から予想してみます。
Microsoftは司法省と米国の19州およびワシントンD.C.から1998年5月に、Microsoftが市場における独占的立場を悪用して競合他社の競争力を削ぎ、消費者の利害を犯したとして提訴されています。
2000年4月には連邦地裁でMicrosoftが敗訴し、同社のOS部門とアプリケーション部門の分割命令が出ました。
しかし2001年6月に米連邦高裁が判決を差し戻し、同年11月に司法省とMicrosoftの和解が成立しています。
その後和解案の修正の後、2002年11月に連邦地裁が両者の和解案を承認したという経緯があります。
最終的には和解し、Microsoftにとって最悪の事態は避けられたものの、後ほど確認するように、Microsoftは業績、株価ともに長期間低迷を余儀なくされます。
今回GAFAは一気に4社やりだまに挙げられているため、Microsoftのみとことなりその影響は極めて大きいです。
その影響を鑑み、分割論議は落ち着くとの見方もあります。
しかし私は提訴される可能性は十分にあると考えます。
その背景は今回のレポートは下院民主党主導で作成されたためです。
Microsoftが提訴された当時は民主党のクリントン政権でした。
GAFA分割が現実化する可能性は小さくありません。
3.GAFA分割が経済に与える影響
GAFA分割は経済の発展にむしろ役立つ可能性があります。
歴史を紐解くと、巨大企業は常に反トラスト法の危機にさらされてきました。
【Microsoftが訴えられたからこそ、いまGoogleは存在している】
Microsoftが政府の監視下に置かれていたとき、Microsoft内部では新しく現れたテクノロジー企業をどうやって潰すのか検討されていました。
その新しい企業とは、Googleのことです。
巨大企業の力の増殖を訴訟で止めたからこそ、新しい産業が生まれました。
当時Microsoft社内では、非公式に「Google潰し」のプロジェクトが進行していたようです。
具体的には、MSNで「Google」と検索をかけたらセキュリティ通知がされ、「管理下以外でGoogleがあなたのデータを使用したことを知っていますか」という警告が画面に表示されるよう、Microsoftのブラウザであるインターネット・エクスプローラーが改修されることが計画されていました。
しかし反トラスト法で提訴されていたためこの計画は実行に移されませんでした。
つまり、「GoogleがMicrosoftを失脚させた」というよりも、政府による独占禁止法の訴訟によって、GoogleはMicrosoftの独占を止めることができたと言えます。
もしMicrosoftが訴えられていなければ、テクノロジーは今日とはまったく違った姿を見せていたでしょう。
そのMicrosoftも反トラスト法のおかげで誕生した側面があります。
1969年、司法省はIBMに対する独占禁止法違反の訴えを受理し、訴訟は13年間続きました。
最終的に政府が敗訴しましたが、IBMはハードウェアとソフトウェアをまとめる計画を中止した。
その変更によって、ソフトウェア産業が誕生しました。
スタートアップ企業は下請けで機械を製造するよりも、プログラムを開発することによって、安定した足場を手に入れたのだ。
Microsoftが設立されたのは、IBMが衰退した数年後である。
巨大企業が反トラスト法によってその力を削がれるのは、経済発展の歴史を紐解くとむしろプラスに働いてきたことが解ります。
4.米国株式市場への影響
これもMicrosoftを例に米国株式市場への影響を予想してみます。
スライドはマイクロソフトとSP500の株価の推移です。
Microsoftは1998年5月に提訴されましたが株価は全くと言ってよいほど影響を受けませんでした。
むしろドットコムバブルと共に株価は力強く上昇していきます。
おそらく市場はMicrosoftが敗訴するとは思っていなかったのでしょう。
しかし1999年12月27日を高値に株価は下落基調に転じ、2000年4月の敗訴で窓を開けて下落
株価は一気に高値から約50%急落しました。
一旦株価は回復するも約1年間かけて70%弱の下落となっています。
悪いことにドットコムバブル崩壊も重なり、SP500と共に2003年までMicrosoftの株価は下落傾向が継続します。
SP500は2003年から本格反発に転じますが、Microsoftの株価は長らく低迷を続けます。
MicrosoftがSP500を本格的にアウトパフォームし始めるのは、現CEOのサティア・ナデラが就任し、クラウドに舵を切った2014年以降です。
結論
提訴だけでは株価が影響を受けるとは限りません。
そしてMicrosoftが敗訴によって下落したところでSP500は調整しませんでした。
当時と違うのはGAFA4社が一括で敗訴すれば影響があるかもしれません。
しかし【3.GAFA分割が経済に与える影響】で解説したとおり、巨大企業の力が減少するのはむしろ競争が促進され、新しいテクノロジーと次世代の高成長企業の勃興を促します。
一旦は株式市場は調整するかもしれませんが、すぐに次世代の出現に気づき平穏を取り戻すでしょう。
ただしGAFAへの積極投資は控えたほうが良さそうです。
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